わだかまり
数年前、禁煙したいと言い出したのは夫。
その頃、私の持病の喘息が上手くコントロール出来ず、発作を起こして救急車で運ばれた事もありました。
その時に医師から喘息は死に至る病気である事、本人の喫煙は勿論、家族の喫煙も害になる事を言われました。
夫はそれを聞いてその場で
「俺、タバコやめる。葵の為にもやめたい。
」そう言ってすぐに禁煙外来に通うことになりました。
何十年も吸ってきたタバコをやめるのは
中々大変だったようですが徐々にタバコの本数を減らし、そして無事に禁煙する事が出来ました。
途中、吸いたい欲求に負けそうになったり
イライラして私に八つ当たりしたり、辛い事もありましたがそれでも「葵の為に」と言ってくれた夫の気持ちが凄く嬉しくて私も頑張ってサポートしてきたつもりでした。
それなのに・・・
10日もしないうちに夫はまたタバコを吸いはじめてしまいました。
何気ない会話の流れから冗談で
「まさかタバコ吸ってないよね?」
と聞いたところなに食わぬ顔で
「1本吸っちゃった。」と夫。
しかもへらへら笑いながら。
ぶちギレました。
この時もかなりのケンカをしましたが
その時夫は「俺も色々辛いんや。タバコぐらい吸わせてくれ。」そう言いました。
自分から禁煙したいって言ったのに。
私の為にやめるって言ってたのに。
泣きながらそう言った私に対し
「家では絶対に吸わへんから。」
と言う夫。
違う❗
そうじゃない❗
この人は何も分かってない。
どうしてこの人はいつも自分を甘やかすんだろう。
どうしていつもこの人は自分の事しか考えられないのだろう。
結局その後話し合いは平行線のまま。
夫はまたタバコを吸い始めました。
それまでも夫のいきなりの退職や2ヶ月もの間の無職状態。繰り返す転職癖。
色々辛い事があってそれでも私が頑張ればとの思いで必死に乗り越えて笑い話に変えてきたけどこのタバコの件だけは小さなしこりとなって私の中に残っていました。
たかがタバコ。
夫にとってはそれくらいの思いかも知れませんが私にとってはどうしても納得が行かない事でした。
それは夫の言った言葉のせい。
「葵の為に」
この言葉、本当に嬉しかった。
私の事をちゃんと考えてくれてるんだと
思えたから。
私の事を大切に思ってくれてるんだと
思えたから。
それなのに夫はいとも簡単に自分の言った事をあっさりと覆した。
私の事よりも自分の辛さを優先して。
それが私には許せなかった。
だからずっとずっと心の奥底に残っていたのかも知れません。
そして今現在。
夫はステージ4の大腸癌。
肺に転移し更に他にも転移があるかも知れない状況でまたタバコを吸っています。
これから先、どうなるか分からない状況の中
「葵の為にも健康に気を付ける」
「葵の為にも長生きする」
そう言った夫を信じて時にはケンカをしたり
涙を流したりしながらでも今日まで頑張ってきました。
でも、また同じ事の繰り返し。
きっと夫と話してもまた自分の辛さを優先するんだろうなと思います。
小さなわだかまりが大きくなってしまった今
この先、辛い抗がん剤治療をしていく夫を
支えられる自信がなくなってきました。
夫は本当に私を愛してるんだろうか?
私は夫を本当に愛してるんだろうか?
夫婦の繋がり、一緒に生きて行くと言う
意味が分からなくなってきました。
弱音を吐きたくないけど凄く辛いです。
私はどうしたいのかな・・・